ひきこもり支援回復マニュアル作成委員会緊急声明


ひきこもり支援回復マニュアル作成委員会緊急声明

「2020年6月8日正午、中学時代不登校ひきこもりだった高校生の拳銃自殺のニュースが流れました。どうか、立ち止まり誰かに相談して下さい!ひきこもりの人たち死なないで下さい!」

ひきこもり支援回復マニュアル作成委員会・NPO法人JUST日本トラウマサバイバーズユニオン無料電話相談責任者二宮敬子

【ひきこもり・危険な対応】

※ひきこもりの当事者に、いきなり社会復帰を促したり、外へ行けと言うことが、暴力や自殺を誘発し危険!

今、虐待やDV性暴力被害など、様々な依存症、ひきこもりなどが社会問題になっています。

昨年までも、今年も、多くの痛ましい事件がありました。

事件がおきる度に、NPO法人で虐待やDV性暴力被害、依存症などの電話相談員として僅かな支援に関わっている私は、引きこもりについての偏見や誤り、報道の偏りにおける危険性を感じ、胸を痛めています。

昨年、川崎のスクールバス襲撃の事件では、事件の加害者がひきこもりである=精神疾患があるかのような報道が散見されました。

また、事件の直前に、同居の叔父叔母が、ひきこもりの加害者に、今後のことを手紙で尋ねたことが報道されていました。

ひきこもりの当事者は、何らかの心の傷があり、ひきこもることによって何とか自分を守っています。

その心の傷に何の治療もされず、方法があることも知らず、ようやく何とか自分を保っている時、この事件のように、家族から外界へと促されることはとても危険です。

つまり、この事件は同居の叔父叔母がひきこもりの加害者に今後のことを尋ねたことが事件をおこすきっかけになった可能性が考えられます。

一部の支援者の中で近年言われているのは、社会復帰を促すときや、新学期や行事の季節に、社会に対する絶望や恐怖、憎悪が悪化する危険性、自殺を誘発する危険性についてです。

自殺と大量殺人事件は一枚のカードの裏表です。

もしこのことが世間に広く知られていたら、事件は起きなかったかもしれません。

昨年事件直後、ひきこもりを責める報道やネットの声のあまりの大きさに当事者団体が声明を出しましたが、ほとんど取り上げられませんでした。

私の受けた電話相談にも、当事者の方から「もう自分は責められて辛い、何も不安で手がつけられない」という声や、「本当に自分は死ぬべきなのではないだろうか?死ぬことしか考えられない」とのご相談が複数ありました。

私はいてもたってもいられず報道各社に電話をかけたり、現状を知って欲しいとメールをしました。勿論徒労でした。

間もなく、練馬で官僚の方が家庭内暴力に悩み、自分の子供が川崎の事件を起こしてはいけないと、ひきこもりの子供を殺めてしまいました。

川崎の事件では、外界から閉じこもり家族との接触がない怒りが内包され溜め込んだ例でした。一方で家庭内暴力のケースの子供のほとんどは、怒りが全て家族に向き、外では極端におとなしく、怒りの矢印は外に向きません。

このようなことが、もっと一般的に認知されていたら違う結果になっていたでしょうか?

ひきこもりの当事者がその原因を語らない時に、家族が理解できないのは当たり前です。ですが、当事者が言語化できなかったり、自分が本当に悪いからだと思っていたら?

練馬の事件は当事者は1人暮らしをしていたが、ゴミ出しの問題で近隣とトラブルになり、事件の前に自宅に戻ってきていました。

今、PTSDなどで1時的に認知が落ちていたり、発達障害や認知症の方からも同様の悩みを聞きます。

ゴミの分別が細かくてわからない。汚れたプラスチックは燃えるゴミでいいはずなのに、マンションの住人から、分別しろと怒鳴られゴミ袋を玄関前に戻される。

耳から情報が入らない人もいます。ゴミの出し方で怒る人がもし怒らずに、出し方を丁寧に紙などに書いて渡していたら…?

やる気の問題とは違う問題、なまけや悪意でゴミを決まった日に出せないのではない人が世の中にいるともし知っていたら…?

ひきこもりについてもっと支援者や世間に正しい情報が広がっていたら、痛ましい事件や悲しい事件を防ぐことができる可能性が出てくると私は強く思いました。

※この一連の問題は赤ちゃんや子供の発達における問題点への養育者や一部の教育者が抱く誤解や偏見、虐待の問題と根っこが同じです。

ひきこもり支援回復マニュアル作成委員会・NPO法人JUST電話相談員二宮敬子

☆原稿二つ目

【ひきこもり・危険な対応コロナ禍において】

改めて昨年書いた原稿に追加して書こうと思ったのは、外出自粛解除で世間がソワソワする中で、ひきこもり当事者からのご相談や友人からの相談があったからです。

新型コロナ問題で「外出自粛」という「積極的ひきこもり奨励・推奨・強制」という新たな考えができました。

人と人の接触を制限することによって、感染のスピードを遅くする!

感染拡大のスピードが速いと危惧される新型コロナウィルスが感染拡大爆発と共に、人類の免疫力に勝つ為強毒化したり、致死率が上がるのを防ごう!という考え方です。

単純労働者や接客業従事者や感情労働者など(電話相談員も含む)以外の方々はテレワークが進んだり、私学ではいち早くインターネット授業導入され利点もありましたが…。

多くの非正規雇用者、接客業従事者や音楽業界演劇業界などの方々は職を失い、公立ではほとんどインターネット授業はできず、9月開始の要望が保護者や子供から上がり学生自らの署名活動につながりました。

子供と大人、夫婦が外出制限や感染拡大や死亡、生活費や学業の不安に脅えながら狭い家に閉じ込められ、虐待やDV性暴力被害などの危険性や緊張が高まりました。殺人事件も起きてしまいました。

一時的にネットカフェや深夜のファミレスに逃げてしのいでいた虐待やDVの被害者は逃げ場を失い、コロナを外出禁止に利用され更に逃げる事が困難なDV被害者もいました。

ストレスで様々な依存症が悪化して、摂食障害の支援団体がヘルプの声をあげたニュースが流れました。

「自粛警察」と言う言葉が生まれ、ニュースでパチンコ店にギャンブル依存症の方々が並ぶ様子が繰り返し流され非難されました。

病院に行く事すら感染死亡を恐れ、薬が必要でも病院に行けない人、手術(中絶手術も含む)を延期する人が増えました。

しかし悪いことばかりではなく、支援者の仲間からは「ひきこもり容認の流れで家族の緊張状態が緩和された。」との話も聞きました。

「ひきこもり容認の流れで若者も安心している。」「このタイミングで親も問題解決しようと思わなくなりひきこもり支援は停滞期。」との話を聞きました。

そのようなコロナ禍の最中、何とか経済優先の自粛解除がはじまりました。今は安堵と不安のごちゃ混ぜの人々の緊張が高まっているように見えます。

私が今危惧しているのはひきこもり当事者がまた、社会復帰を促され追い詰められる危険性です。

ひきこもりの原因のひとつであるPTSDや依存症は、台風後などの気圧の急変、震災や戦争などにより悪化します。コロナ禍も同じでした。

今コロナ禍終息と思っている方々は、今までたまっていたストレスや怒り、恐怖などをこれから放出、爆発させる人も出るかもしれません。

このタイミングで、ひきこもり当事者が再び親から外出や社会復帰を促されてしまう危険性が、今私はとても心配です。

親子とも不安が癒えていない中、今、爆発する事件が起きることを非常に心配しています。

心のケアが先決です!。

どうか、急がないで下さい。

(とは言っても、生活費はどうするんだ!と怒る方々もいるでしょう。一時的に公的支援に頼る必要があるかもしれません。)

NPO法人JUST理事長斉藤学医師は昔新聞のコラムでこう書きました。

「あなた達は病んで働けないことを嘆くが、働かないことでひきこもり人を殺さずにすんでいる。」

昨年川崎のスクールバス襲撃事件直後7月25日、斉藤医師は私に言いました。

「ひきこもりはひきこもりでいい。必要があってひきこもっている。」

「もともと1940年頃は年間 300件近くの子供殺しがあったが今は半数近くになり引きこもりという行動がそれを防いでいる。

バス襲撃事件は中高年の典型的な引きこもりで精神科に家族が来てくれたら何とかできたが…。」

ただ、精神科に行くにはエベレストに行くより辛い方々も多いでしょう。

私も何時も電話相談で受けているのは日本全国のどこか精神科につながっていない当事者や家族です。

虐待やDV性暴力被害や依存症、ひきこもりは「家族の秘密」です。他人に相談するには高すぎる壁を何とか心身ともに衰弱したなかで乗り越えなければならないです。

何とかひきこもり支援の相談や団体に繋がっても「理解されず傷ついた」との声も多いです。

ひきこもり支援の団体も、「寄り添い型」から「当事者を拉致監禁型」まで玉石混交です。

ですが「拉致監禁型」当事者の更なる傷つきを増やすだけの事も多いです。

「ひきこもり」について、「寄り添い型」では時間がかかる無意味と言う方もいます。

「外に出ることができない。どうしたらいいのかわからない!死にたい!」

「いっそ子供を殺して楽にしてやりたい!」

悲痛な声の中、私は回復には時間がかかる事を短い言葉で伝えます。

必ず、傷ついた心にはいつか回復する時がやってきます。

どうか、急がないで、諦めないで下さい。

周りの方々も、否定せず励まさず、責めないで下さい。

コロナ禍の中で、日常が始まっても、また感染拡大や第二波の不安が広がっています。

辛い時は今日1日だけ、最小限のことだけにして無理なさらないで下さい。

必ず、コロナ終息の日や、心の傷や問題が回復する日がやってきます。

ひきこもり支援回復マニュアル作成委員会・NPO法人JUST電話相談員二宮敬子

2020年6月3日

ひきこもり支援回復マニュアル作成委員会

ご訪問ありがとうございます。 私たちはひきこもりに対する間違った認識やより良い回復へのアプローチについて発信し、それをマニュアル化して全国の関係機関に配布することを目的として活動しています。

0コメント

  • 1000 / 1000