ひきこもりの理由・ゲーム依存症・ネット依存症・スマホ依存症・育児期について~その1~
【ひきこもりの理由・ゲーム依存症・ネット依存症・スマホ依存症・育児期について~その1~】
ひきこもりのご相談だけではなく、様々な子育て支援関係者や学校関係者や会社の人事担当者まで、幅広い年代から「ゲーム依存症」「ネット依存症」「スマホ依存症」の話を聞きます。
子育て支援の保健師さんからは、ネグレクト(育児放棄)と思われるお母さんと、赤ちゃんの両者とまず話しをしようとしても、目が合わないという話を聞きました。
ある検診の日のことです。その赤ちゃんは月齢と比べて小さく痩せて表情がない。肌はガサガサ、首や手足のシワの中が垢だらけ。お母さんは待合室でもひたすらスマホのゲームをしていて、泣き声に気がつかない。
その保健師さんが「抱っこしますね~」(赤ちゃんは泣いたら抱いてあげて下さいねと言う助言を直接言わない)と声かけして抱き上げようとしたら、身をよじって赤ちゃんが抱かれるのを拒否したそうです。
赤ちゃんは体重や身長の測定も嫌がってかすれた声で身をよじり時間がかかり、小児科医の診察では人形を見せてあやしても反応なく、ぐったりとして、目は開いていても表情がありませんでした。
医師が「唇もカサカサでお腹もすいているかもしれません。ミルクかお茶を今飲ませてあげて下さいね」と言ってもお母さんは黙って返事もせず帰ろうとしたそうです。
医師も保健師さんもこれはまずいと感じて、保健師さんが別室に案内して話そうとしたら、ぐったりしている赤ちゃんはベビーカーに荷物を置くようにのせて、お母さんはスマホのゲームをまた再開しました。
このケースは地域の保健センターの保健師さんと、児童相談所のワーカーさん、子育て支援センターの相談員の3ヶ所で虐待に介入、支援が開始されようとしましたが、1ヶ月もたたないうちに母子は住民票を移さず転居してしまいました。
住民票を移していれば、転居先の児童相談所に申し送りが出来ましたが、このケースはこの先の介入がなされないまま、保健師さんの手の届かないどこかに消えてしまいました。
ネグレクトの母親は、母親自分自身が虐待を受けたり、ネグレクトで育っていることも非常に多いです。
機能不全家族で育ったり、虐待やDV性暴力被害の母親がPTSDに苦しみながら出産育児をして、結果、育児放棄や虐待になってしまうことも非常に多いです。
苦しみから逃れ生きる為に依存症になり、子育てに問題が起きても対処できないケースも多いです。
赤ちゃんを置いて「恋愛依存症」「セックス依存症」「ギャンブル依存症」で外出してしまったり、結果餓死や、母親を探して外出して交通事故や…。パチンコ店での連れ去り事件、パチンコ店駐車場での熱中症死亡事件なども複数ありました。
他にも「ゲーム依存症」「ネット依存症」「スマホ依存症」などでお母さんは赤ちゃんが目の前にいても抱けない、世話ができないケースが増えています。
子供の衰弱死や餓死だけではなく、目の前のお母さんが全く自分を無視し続けると赤ちゃんの心が死んでしまいます。
ですが、お母さんを責められない時がほとんどです。ただでさえ産後の母親はホルモンバランスを崩しやすく、産後うつになることもあります。
泣いていても赤ちゃんを抱けない。オムツをかえられない。お風呂に入れてあげられない。お母さん自身も食事がとれなかったり、眠れなかったり、やせ細り、外出困難になる時があります。
そんな時、ネットで育児方法を探し続けてどんどん長時間やめられなくなったり、ネットゲームで誰かと繋がって孤独な育児の苦しみから魂が抜け出るのです。
産後のお母さんには保健センターの保健師さんや助産師さんの訪問や支援はありますが、本人や家族の申請が必要なことが多く、
「みんなちゃんとやっているのに、私は子育てをきちんとできない駄目なお母さん」と思いこんでいて家族がすすめても本人が拒否することも多いです。
昔は里帰り出産や実家の支援で乗り越えることができた人も多いでしょう。
ですが今は実家の親がかなりの高齢で赤ちゃんの育児と介護のダブル、両親祖父母の介護のトリプルのお母さんもいます。遠距離で飛行機や新幹線を使ってその困難なミッションをこなしているお母さんもいます。
両親や祖父母の介護を公的支援で全部まかなうにはヘルパーさんの時間は足りないことも多く、貯金をくずしたり、身体が限界でも更に仕事をするお母さんがいます。
(限界まで仕事をするのはお母さんだけではありません。今は赤ちゃんを抱えた父子家庭も多いです。1日でも早く父子寮ができないと、また父子家庭の心中がおきてしまわないか危惧しています。支援がない孤独な子育てが結果虐待やネグレクトになってしまう時もあります。)
心も身体も限界の時、精神的疲労で母乳がでなくなり、途中からミルクにするとなかなか赤ちゃんは人口の乳首を嫌がり激しく泣きます。ミルクを飲まず母乳を欲しがり泣くの繰り返しで、近隣から児童相談所に通報されたお母さんの話しがありました。
ある日いきなりスーツの若い恐い感じの男性と化粧のはっきりしたブランドのバッグのスーツの年配の女性がインターホンを鳴らしたそうです。
児童相談所の○○です。と名乗った年配の女性の声を聞いてお母さんはすぐに怖くなって足が震えすぐにはドアを開けられませんでした。
ですが年配の女性はドアをノックして、ごめんなさい通報があって赤ちゃんの顔だけでも見せていただけませんか?と大声で言ったそうです。
赤ちゃんがお母さんの様子にびっくりしたのでしょう。激しく泣きだしました。
混乱したお母さんが赤ちゃんを抱いて震えていると、しばらくしてまたインターホンが鳴りました。
モニターをのぞくと制服の初老の警察官がいて、心配そうに立っていました。
この人は大丈夫だと思っても児童相談所の女性が怖くてしばらく動けなかったそうです。
少したってから、小さくノックされてドアまでいくと、初老の警察官がニコニコしていてドアの向こうでこう言いました。
「赤ちゃんは泣くのが仕事だからね、僕も孫3人に泣かれて泣かれて本当に大変だった。交番の番号とメモ入れておきますよ。何かあったら電話下さい。みんな今は子持ちがほとんどだから。」
「児童相談所の女性の名刺も入れておきますが、僕に電話くれて赤ちゃん見せてもらえば、僕から児童相談所に連絡できるからね。楽な方に電話下さい。」
そしてすぐ児相の人も警察官も帰ったそうです。
そのお母さんは幸いに、ヘルプを出せる同級生が地方の実家の近くにいて、深夜に泣いて電話をかけてもちゃんと話しを最後まで聞いてくれました。そしてポストの電話番号を教えてと彼女は言いました。
一度電話を切ってから、赤ちゃんを抱いてマンション一階のポストに行くと、メモと名刺が入っていました。
同級生は番号を聞くと一度切ってかけ直すと言って、10分位後にかけ直してくれました。
同級生は交番に電話して、その優しい警察官が次いつ交番にいるか確認して、本人がまた連絡すると伝えてくれました。
翌週、そのお母さんは交番に電話して、自宅まで来てもらったそうです。初老の警察官は電話くれてありがとう!と笑ってくれ彼女は泣いてしまったそうです。
地域にはファミリーサポートの制度があり、お母さんは警察官にすすめられて申し込み、毎週2日は介護のみの日にして育児はファミリーサポートのべテランママにまかせたそうです。
子供との時間はこれから沢山ありますが、心臓と糖尿病の悪い実母との時間はわずかとの苦渋の決断でしたが、負担が軽くなり母乳もまた出るようになり安定したとの話しでした。
誰かの助けがあれば、赤ちゃんを虐待せずにすみます。
誰かの優しい声かけがあれば、立ち上がれます。
私の受ける相談電話には、赤ちゃんの泣き声に通報で駆けつけた若い警察官がドアを叩いて怖かったなどの話しも多いですが…。
児童相談所の職員さんも1人でもの凄い相談件数を抱えていて、ご本人が精神的にも倒れないか?過労死しないか?と案じるような働き方です。
国や都道府県がもっと児童相談所や民間の支援団体や官民の児童養護施設に予算を今の倍額位計上し箱物も人員も増やして、重すぎる個人の負担が減らないと、虐待の問題に関わる人々の「児相は機能不全で助けてくれない」という声が消えないと思います。
誰かが誰かに優しい言葉がけのできる世の中にもっとなればいいと祈ります。
優しい話しは沢山あり、次回は優しい話しをお伝えしたいと思います。
ひきこもり支援回復マニュアル作成委員会・NPO法人JUST電話相談員二宮敬子
2020年6月16日
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